よしまり。@yoshimarilogです。
憲法の授業で取り上げられた、『大島訴訟』(最高裁判所民事判例集39巻2号247頁)について感想を書いてみたいと思います。
図書館がコロナで閉館なので、授業と判例を読んだあとの
自主学習の色の強い記事になりますが、
- 大島訴訟ってなんだろう
- サラリーマン税金訴訟って興味がある
- 憲法の視点からの問題点ってなんだろう
こんな感じに、ふんわりと興味の出た方は、読んでみていただけたらうれしいです。
大島訴訟(通称:サラリーマン税金訴訟)
ざっくりこんな訴訟を、大島さん(47歳くらい)という大学の教授がおこしたものです。
論点は3つ。
- 事業者と給与所得者とで、必要経費の控除について不公平が生じていること。
- 給与所得者と他の所得者で所得の「捕捉率」に格差があること。
- 他の所得者には各種の特別措置が講じられているので、給与所得者だけ負担が大きいこと。
これらは憲法14条(法の下の平等)違反だ!と主張したのです。
~~妄想~~
大学の教授が確定申告をしなくて、
税務署長からしたら、コラーー‼申告してないの見つけたゾ‐‐‼と叱る感じで挑んだら、
まさかまさかの、壮大な訴訟に発展したのかな。
すごいですよね、訴訟を起こした大島さん。
憲法違反なのかどうかの基準
所得税法上の問題点も示された判例ですが、
憲法の観点からみると、違憲かどうかを判断するときの基準はどうなの??
という問題があります。
違憲審査基準
違憲審査基準は、上から厳しいもの順に、
- 厳格な審査基準・・・表現の自由を規制する法律を審査するときには、とくに厳しく審査する
- 厳格な合理性基準・・・表現の自由以外の人権を規制する法律を審査する
- 単なる合理性基準(緩やかな基準)明白性の原則・・・表現の自由以外の人権を規制する法律を審査する
二重の基準論
まず、一番上は、表現の自由を規制するものは、一番厳しく審査しますよ、という原則によって、表現の自由の規制であれば厳格な審査基準をつかいます。
消極・積極目的二分論
下の二つ(厳しめの合理性基準か、極めて緩やかな合理性基準か)の判断は、
規制の目的によって使い分けます。
- 厳格な合理性基準
規制の目的が、他人への害悪を防止するものなら、厳格な合理性基準を。
この場合は、もっと他に目的を達成する手段がないかどうかも吟味して、審査が厳しい(違憲と判断されやすい)です。
- 極めて緩やかな合理性基準・明白性の原則
規制の目的が、社会的弱者の保障など、政策目的・積極目的であれば、緩やかな基準を。
大島訴訟では?
大島訴訟では、憲法14条(法の下の平等)に違反しているかどうかを判断するわけですが、
そもそも、平等とは、絶対的なものではなく、
合理的な理由もなく差別されることがダメなのだから、
合理的な区別ならo.k.という考え方です。
したがって、本件が『合理的なのかどうか』を議論する流れとなります。
先ほどの基準のお話に戻って、
本件は表現の自由の規制ではなくて、経済的自由の規制、経済的負担に関するものです。
さらに、租税法のことについては専門的な知識が必要だから、裁判所ではなくて、立法府にたくさん権限を預けよう、という『立法裁量論』があり、
つまり、『立法裁量論』と『二重の基準論(表現の自由の規制以外は穏やかな基準というもの)』を合わせた形で、いちばん緩やかな合理性の基準によって判断されたということです。
感想
伊藤裁判官の補足意見にも、
『・・・、裁判所は、立法府の判断を尊重することになるのであるが、そこには例外的な場合のあることを看過してはならない。』
最高裁判所民事判例集39巻2号247頁
とあるように、緩やかな基準で判断される場合で、租税立法についての違憲審査って、ほぼほぼ合憲になってしまう気がします。
違憲審査基準って奥深いな~と思いました。
大島訴訟では、『立法裁量論』についてたくさん書かれたものがありましたが、
この理論と、二重の基準論と積極・消極目的二分論とのつながりの部分が、まだスッキリと理解できていません。
二重の基準論はアメリカの判例法理によって体系化されたものとのことです。
この判例では、目的が積極か、消極かというよりも、立法府の裁量を多く認めるものとして、緩い合理性の基準を使うに至っている、という。(学習途中の感想)
立法裁量論と、二重の基準論とが合わさって、極めて緩やかな合理性の基準が採用されたということですね。
歴史的な流れもあるだろうし、違憲審査基準について興味深いところです。